■2023年08月23日の「今日のことば」■
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「今日のことば」
ある評論家の仕事を手伝っていたことがあります。 学歴も評論家として独立するまでの 経歴もまばゆいばかり。 そのことは広く知られているのに、それでも 彼は出会う人ごとに自慢をしないではいられない。 それが理解できませんでした。 自慢話はさすがにストレートにではなく、 それとなく遠回しで、こんな具合です。 「本郷界隈には詳しいんですよ。 大学があの近くだったので」とか、 「政治家の××とは親しいんですよ。 彼とは駒場で寮がいっしょでしてね」 家族自慢も相当なもので、ご子息が通う 大学はいうまでもなく、奥さんの実家など、 なんでもかんでも自慢のタネ。 文句なしに優秀な方だったのですが、 あまり好印象はもてませんでした。 ところがあるとき、彼の内心は、 不安でいっぱいなのだと気づいたのです。 彼の出生はけっして恵まれたものではなく そこに触れられることは、彼にとって 屈辱のようでした。 自慢話は、そのあたりの話題を避けたい 一心からだったようです。 自慢話の多い人は往々にしてこんなもの。 みなが自分を評価し、ちやほやして くれなければ不安でたまらない。 裏を返せば、本当は自分に不安を感じていて 自慢話はそれを隠すヨロイなのです。
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