■2015年03月05日の「今日のことば」■
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「今日のことば」
脳外科医の手術では、安全な状態でオペができることは
めずらしいといわなくてなりません。 予想外の危機に直面し、自分の腕一つが 患者さんの生死を分けるということの方が多い。 例えば、頭蓋骨を開頭して脳の表面を覆っている硬膜を開けたとたん 脳の奥の脳動脈瘤が破裂する。 出血源は見えず血の海になり、脳はどんどん腫れてくる。 絶体絶命の状態です。 しかし、ここで医師がひるんだり迷ったりすれば、 それだけ患者さんは死に近づいてしまう。 こういうときはどうしたらいいか、 とにかく恐怖心を克服し、迷いも振り払って、 すみやかな決断を下し、最善の処置を実行しなくてはなりません。 そのときもっとも大切なのが集中力なのです。 もっている能力のすべてを結集して、目の前の命を救うことに 100%集中することです。(略) ときどき患者さんの命を預かる手術は緊張しないのか と聞かれますが、それを忘れるほど集中していると、 緊張などという“雑念”が脳裏に浮かぶことはありません。 私にいわせれば、緊張するのは集中力が足りない証拠で、 とくにかく患者さんを救うという一点に目的を定め、 自分をの錐(きり)の先端としてねじ込んでいくことです。 すると、おのずといいアイデアがわき、 指先も脳の指令どおりになめらかに動いて、導かれるように 適切な処置、最善の手術を行うことが可能になるのです。
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