■2008年03月15日の「今日のことば」■
前日のことばを見る 次のことばを見る
「今日のことば」
ぼくは、大きく息を吸って「父さん」と切り出した。
「ぼくは、医学の道には進めないと思うんだ」 父は、怖れていたことをついに聞いてしまったとでもいうように、 視線を落とした。その表情があまりにも悲しげだったので、 ぼくの胸ははりだけそうになった。 だが、もう一度ぼくを見たときは、今まで見たこともないほど やさしい表情が浮かんでいた。 「わかっていたよ」と父はおごそかに言った。(略) 父をどれほどがっかりさせたかと思うと、 ほくは涙が出そうになった。 「父さん」とぼくは言った、「ごめんなさい」 父は鋭い視線でぼくをみた。 「いいかい、父さんはお前が医者にならないことに失望した。 だが、お前そのものに失望したわけじゃない」
まゆの感想
これは、3代医者の家系に生まれついた少年が、自分は
「医者には向いてない」と思い、それを父に告白する話である。 この少年は、医者に向いてはいないが、鳥猟犬を育てる力があった。 そして、ある日、1匹の犬(ジェリー)を父から与えられて、 この犬を1人前の鳥猟犬にするように言い渡される。 しかし、ジェリーは狩りをするより、走ることの方が好きで、 この少年は、ジェリーを1人前の狩猟犬にすることができなかった。 ジェリーは、猟犬種ではあったが、猟犬には向いてなかったのだ。 しかし、ジェリーには、違う「才能」があった。 それは、とても楽しそうに、素晴らしく走ることことだ。 父も、ジェリーは猟犬には向かなくて、走るのが好きなのだと知る。 そこで、今日のことばの話にあるように、 「医者には向かない」と父に告白した息子に父はこう言う。 (以下本からの引用) 「お前がジェリーにしたことを考えてごらん」と父は言った。 「お前は、こいつを狩猟犬に育てようとした。しかし、 こいつはそう生まれついていなかった。 そのことについてお前はどう思っているのかね?」 「しばらくの間、失敗したと思っていました。でも、あいつが 走る姿を見て、あいつがどんなに走るのが好きなのかを知って、 それだけで十分素晴らしいと思うようになったんです」 「そのとおりだ」と父は言って、ぼくをじっとみつめた。 「さて、今度はお前がどんなふうに走るのか 見せてもらおうじゃないか」 父はぼくの肩をたたき、「お休み」を言うと、行ってしまった。 (ここまで) 今日は、ちょっと感動した話を書いてみました。 その人にはその人なりの持ち分や特技や好きなことがある、 それを認めてあげること… そして、そのことで、相手が思い通りにならなくても、 思い通りにならないことに失望はしても、 その人そのものに失望したわけではないこと、 こう言えること…大切だなぁと思ったのでした。 |
|