■2020年08月05日の「今日のことば」■
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「今日のことば」
どんな人間であるかを示さなくてはならなくて、 履歴書の提出を求められる。 紙面には、あらかじめ定められた項目があって、 ひたすらにそれらに答える。 言葉に書き得る情報で、私たちは、 自分を語ることを強いられる。 入試あるいは入社試験などでは、面接官がそれに 文字通り目を通して、いくつもの質問をしてくる。 そうした応答がしばらくあって、 「分かりました、本日はありがとうございました」 と紋切り型の言葉が発せられる。 こうしたとき、私たちの中では静かに、 しかし、確かに燃え上がるような勢いで、 ある思いが生まれる。 「違う、あなたは分かってなどいない。 そこに記されている事実は確かに私についての ことだが、それは何も私を語っていない。 そこに私の本当の姿はない」 と内なる声がする。 振り返ってみれば、履歴書を書き進めているうちに 私たちは、どの項目にも書き得ない出来事こそが 人生を決定してきたことをに気が付いていたはずだ。
まゆの感想
履歴書を提出せねばならないとき、
複雑な気持ちになっていましたが、 若松さんが書かれたようなことを感じるからなんだ、 と、あらためて思いました。 また、この自分の一面を書き記して、 何がわかるんだろうなあ、 このどこで評価され、あるいは、されず、 なんだろうなあ、などとも思います。 でも、みんな同じような思いで履歴書を出し、 同じような基準(あるいは好き嫌い)で、 選択され、その後、やり取りや面接などで、 評価されるのでしょうから、ある意味、 平等と言えば平等なのかもしれません。 ただ、本人が複雑なだけで…。 履歴書に書ききれない、書き得ない欄外のことに、 自分の経験がある、人生がある… 確かにそうだなあ、と思ったしだいです。 |
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