■2020年05月15日の「今日のことば」■
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「今日のことば」
あるうつくしい夏の正午ごろのことです。 森の中はしんと静まりかえっていました。 小鳥たちは、動物たちも一休みしていました。 そんなときです。 アトリ(花鶏)が、ふと頭をもたげて聞きました。 「ねえ、生きているってどういうことかなあ?」 とてもむずかしい質問で、誰もがしんとして 考え込んでしまいました。 一輪のバラのつぼみが開きかけていました。 恥ずかしそうに一ひら、また一ひらと 花びらを開きはじめて受ける日光を 大喜びしていました。 「生きているって何かになることだと思うわ」 とバラは言いました。 蝶は考えごとが苦手です。 花から花へと元気に飛び回って、あっちもで こっちでも、おいしい蜜をたっぷり吸ってました。 「生きているって楽しいよ。 日がいっぱい当たってね」 と、蝶はいいました。 地面の上でアリがせっせと働いていました。 自分の体の十倍もの長さの藁くずを えっちらこっちら運んでいました。 「生きているって、あくせく働くことだよ。 汗だくになってしこしこ働く。 緊張のしどうしさ」 生きているってどういうことか、 ガヤガヤと議論が始まりそうでしたが、 このとき、しとしとを雨が降りだしました。 雨は言いました。 「涙だよ。生きているってことは結局、 涙につきるのさ」 森の上空に一羽のワシが大きく輪を 描いて舞ってました。 「生きているってことはね」 とワシは言いました。 「つねに高く、より高く舞うことだよ」 (下に続きます)
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