■2020年06月05日の「今日のことば」■
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「今日のことば」
経験は財産です。人生の中で 味わった特別な経験がその人の魅力をつくり、 つらい出来事を乗り越えた経験が人を強くする、 といわれますが、それはおそらく事実でしょう。 しかし「経験をしていない」 こともまた、ひとつの財産です。 自分が経験していないものだからこそ、それに 対して無限の想像力を広げることもできるし、 先入観や思い込みを持たずに本質に 迫っていくことも出来るのです。(略) 経験や専門性は、意識の持ち方によっては むしろ、財産どころか重荷になることもあります。 「これはもうわかっている」 「こんなことは当たり前だ」… 経験や専門性があるからこそ、 物事に対する態度が薄れたり、すでに 自分の中にある経験や知識に当てはめるだけの、 思考停止状態に陥ってしまったりするのです。 しかもその経験は、 自分にとっては当然のものであるだけに、 カセになっていることにすら 気づかないことも少なくない。 とても慎重さを要するところです。 ただし、ずっと「知らない」ままで いいと言うことではありません。 「知らない」なら「知ろう」とするべきだし、 「知っている」なら「疑おう」としなければ、 大切なことはなにひとつ見えてきません。
まゆの感想
この話には、こんな寓話が書かれています。
「よく「漫画家になりたいなら漫画以外の 遊びや恋愛に興じろ」だとか、「人並みの人生経験に 乏しい人は物書きには向いていない」だとか 言われますが、私の持っている漫画観はまったく逆です。 人はゼロからストーリーをつくろうとする際に 「思い出の冷蔵庫」を開けてしまう。 自分が人生で経験して「冷凍保存」しているものを 漫画として消化しようとするのです。 それをよしとする人もいますが、私はそれを 創造行為の終着駅だと考えています。 近所のスーパーで買ってきた肉、野菜、チーズ、牛乳… どの家にの冷蔵庫もたいして変わりません。 多くの〝人並みに人生を送った漫画家たち〟は、 「でも、せっかくあるんだし、もったいない…」 と、それらの食材で賄おうとします。 思い出を引っ張り出して出来あがった料理は、 たいていがありふれた学校生活を舞台にした料理です。 しかし、 退屈で鬱積した人生を送ってきた漫画家は違う。 人生経験自体が希薄で記憶を掘り出してもネタがない。 思い出の冷蔵庫になにも入っていない。 必然的によそから食材を仕入れてくるはめになる。 漫画制作で言うなら「資料収集、取材」ですね。 すべてはそこからはじまる。 その気になればロブスターどころじゃなくて、 世界各国をまわって食材を仕入れることもできる。 つまり、漫画を体験ではなく緻密な取材に 基づいて描こうとする。 ここから可能性は無限に広がるのです。 私はそういう人が描いた漫画を支持したい。 そつなくこなす〝人間優等生〟よりも、殻に 閉じこもっている落ちこぼれの漫画を読みたい」 経験は、生きていく上で確かに役立つし大事。 ただ、それにしばられたり、それが当然と思っていては 新しい知識は入ってはこないし、 新しいものも生まれてはこない… そんなことを感じたしだいです。 |
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