■2005年11月30日の「今日のことば」■
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「今日のことば」
アルカトラズ(※)に、一人の終身刑犯がいた。
すべての世界が彼からは遮断されていた。 空虚で暗澹とした日が1日1日と過ぎていき、 彼は空をとぶ鳥の群れを窓越しに眺めるばかりだった。 ある朝、一羽のケガをした雀がたまたま独房に入ってきた。 彼は、その鳥を看病して元気にしてやった。 彼にとってそれは、単なる一羽の雀ではなく、 特別な存在になった。 他の囚人、看守、訪問者も彼のところへ鳥を持って くるようになり、彼はしだいに鳥について 多くのことを知るようになった。 やがて独房のなかに本格的な飼育場がおかれ、 彼はますます専門的な知識と技術を深めていき、 ついには鳥類の病気に関する著名な権威となった。 こういった研究を彼はまったく独学でしたのである。 独房のなかで40年余りの歳月をぼんやりと 虚しく送る代わりに、アルカトラズの鳥類学者は、 退屈というものが、自由と同じように、 心の持ち方しだいであることを発見した。 なにかしら新しく学ぶものがかならず存在しているのだ。 彼は、絶対的な地獄ともなりえた環境を、 少なくとも魅力的な煉獄に変えたのである。 ※アルカトラズ (サンフランシスコの小島。かつて連邦刑務所があった)
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