■2002年04月04日の「今日のことば」■
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女が一人夜の空港で待っていた。
飛行機が出るまであと、数時間。 女は空港の売店で本をあさり、 クッキーをひと袋買って、腰をおろした。 夢中になって本を読んでいるうちに、ふと気づけば 横にいる男が、こともあろうに、二人の間に置いた 袋から、クッキーをつまんでいる。 女は騒ぎを起こすのがイヤだったから、知らんぷりを決め込んだ。 女は本を読み、クッキーをかじり、時計をみていたが、 呆れたクッキーどろぼうは、クッキーをどんどん食い荒らしてくれる。 刻々と時間がたつにつれ、女のいらいらはつのるばかり… 私がこんないい人でなきゃ、ぶんなぐってやるわ。 女がクッキーを一つとれば、男もまた一つ取る。 最後の一つが残ったけど、この男はいったいどうする気だろう? 男は、頬をゆるめ、わざとらしく笑うと、 最後のクッキーを手に取り、二つに割った。 その一つを女に差し出し、残りを男は食べた。 女は男からクッキーのかけらをひったくると、内心思った。 「ああ、なんてやつ。この厚かましき、この恥知らず、 一言のお礼も言わないなんて!」 こんなに腹が立ったのは、生まれて初めてだわ。 出発便が呼ばれたときには、ほっと安堵のため息が出る始末。 荷物をまとめて、ゲートに向かい、 「恩知らずのどろぼう」には目もくれずに立ち去った。 女は飛行機に乗り、座席に身を沈め、 やおら本を捜した、あともう少しで読み終わるわ。 荷物をまさぐった女は、驚いて息をのんだ。 なんと、自分買ったクッキーがある! 「私のクッキーがここにあるなら…」うちのめされて彼女はうめいた。 「あれはあの人のだった、それを私に分けてくれた…」 謝ろうにも手遅れだと、女は悲しみに身もだえた。 自分こそ、恥知らずの、恩知らずの、どろぼうだった。
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大好きな話の一つだ…
こころも体も疲れてるときには、ちょっとした さりげないこころ温まる話が自分を慰めてくれる。 |
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