■2008年02月05日の「今日のことば」■
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あるとき、彼は英語の論文の訳をお願いされた。
そう難しいものではない。そう長くもない。 1時間もあれば訳し終えるだろうものだったらしい。 朝の9時ころにお願いされて、そろそろお昼。 もう終わったかな、と頼んだ人が席をのぞくと、 まだ半分も進んでいない。 他の仕事をしていたのかと思いきや、どうもそうでもない。 ちゃんと頼んだ直後の9時から取りかかっている。 結局、正信さんはその日の夕刻5時近くにようやく訳し終えた。 1時間のつもりが、丸1日かかってしまった。 しかし、中身はしっかりしている。 丁寧にきちんと訳されていたという。 そういえば、最初、彼が自己紹介したとき、 「私は理解するのに時間がかかるんです。 仕事も遅い。でも、ちゃんとやります」 というようなことを言っていた。 弱さや欠点を恰好をつけずにさらして、素直に自分を見せる。 これも、強さのひとつだと思う。 だから、頼んだ仕事が時間がかかっても、 「ああ、こういうことか」と納得できる。 もちろん、職場の状況や仕事の種類によっては、 悠長なことは言っていられないだろうが、自分を知って、 自分に素直になることは極めて大切なことだと思う。
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この本に出てくる、彼、正信さん(仮名)は、
35歳頃に、考えるところがあり、国立の医学部を受験し、 合格し、その後47歳でクリニックを開業し、現在でも、 仕事に意欲を持ち、情熱を傾けているという人である。 その正信さんは、非常に優秀な3歳上の兄といつも 比較されて育ち、実際に、子どもの頃~青年期は、 要領が悪く、さえず、物事の進めるスピードも遅く、 友人達が20分くらいで終える宿題も、 1時間かけても終えられなかったそうだ。 つまり、正信さんは、すぐに結果は出ないが、 地道に積み重ねていくタイプで、兄に比べると、 出来はよくなかったが、コツコツと努力するタイプだったのだ。 そして、現在では、立場は違ったものになっているようだ。 兄は、大手メーカーで出世はしたが、その後、上司と うまくいかず退職し、さらに事業を興したがうまくいかず、 その逆に、正信さんのクリニックはうまくいっていて、 これからだという。 この本では、優秀な兄を「ウサギ人間」、 要領が悪くさえない、正信さんを「カメ人間」と 言っているが、その正信さんの 「身の丈を見極めた生き方」に、非常に心を打たれた。 そして、その素直な生き方にも… 私自身が、カメ人間でありながら、カメ人間だということに 負い目を持ち、それを素直に認められず、生かせず、否定し、 いつも「ウサギ人間」にあこがれているからかもしれない… 正信さんのような素直な生き方を、これからは目指したい、な。 |
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