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「今日のことば」
Aさんは、52歳の大腸ガンの女性患者。
頑固な吐き気が最期までどうしてもとれなかった。
複雑な過去を持った人で、極度の人間不信に陥っており、
医師や看護婦を寄せ付けないという雰囲気があった。
親切心をもって言った言葉を被害的に解釈することがよくあった。
病室にいってもほとんど物を言わず、つらさも表現しなかった。
いわゆる「取り付く島がない」という感じであった。
吐き気がうまくコントールされなかったことも一因ではあろうが、
コミュニケーションのとりにくさは、彼女の性格的なことに
原因があるように私には思われた。
ところが…
衰弱が進み、意識も少し下がり、
死が近づいたある日のこと。
受け持ちの看護師が彼女の側に座って手を握り、
「何もできなくてごめんね」と言った。
それに対して彼女は、
「看護師さんは何もしなくていい。
親切な心をもってそばにいてくれたらそれでいい。
ありがとう」
と言った。
看護師は彼女の意外な言葉に感動し、
「Aさん、ありがとう」と言った。
この短い会話を私に報告しにしてくれた看護師は、
報告しながら声をつまらせ、大粒の涙をぽろぽろこぼした。
これがこの患者の最期の言葉であった。
彼女は3日後に亡くなった。
この最期の言葉はこれまでのスタッフの苦労を
一気に吹き飛ばすものであった。(略)
不治の病とのつらく長かった闘いを、
いままさに終えようとしている最愛の人の投げかける最期の言葉。
そして、死を覚悟して自ら家族に遺す言葉…
それらは、どんな言葉であっても、
付き添う私たちスタッフの胸を打たないものはない。
ただ、願わくば人生の最後に、
いい別れ、いい言葉がけができるように、
日々の生活の中で、よい関係を築いていければと思う。
人生の最後に、やはり、
嘘の言葉は出てこないものなのである。
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