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「今日のことば」
明治時代の俳人、萩原井泉水さんは、人間の柔軟性について、
豆腐をたとえにしてうまい表現をしておられる。
「豆腐は四角四面の仏頂面だが、軟らかさでは申し分ない。
身を崩さぬだけのしまりもある。煮ても焼いてもよし、
沸き立つ油で揚げても、寒天の空に凍らしてもよい。
相手を選ばぬ。チリ鍋、スキヤキ、おでん、正月の重箱でも
仏事のお皿にも一役買う。実に融通がきく、
無我の境地に至っている。
それは重い石臼の下をくぐり、こまかい袋の目を漉して、
さんざん苦労したからである」
ついでに追加させていただけば、
「初めは、冷水の中にドップリと浸けられた上で、熱湯の中を
くぐりぬける。その後、石臼で自分という形をなくされ、
にがりによって、程よい硬さにされる」
人間の修業以上のきびしい体験を積んだともいえる。
だからこそ求められるままに対応できる。
変化の厳しい今日、
豆腐師匠のところへ弟子入りしたいものである。
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